自動車リサイクル(2005年11月)
2005年1月に自動車リサイクル法が本格施行されました。1台当たり1万円前後の料金を集め、廃車の再資源化を促進する新たな仕組みは、大きなトラブルもなく動き出しました。
参入業者10万超、広がる輪
自動車リサイクル法の本格施行で〈1〉車体を破砕して金属を回収した残りクズ(シュレッダーダスト=ASR)〈2〉リサイクルが難しいエアバッグ〈3〉オゾン層を破壊するフロン--の3品目は、自動車メーカーや輸入業者が処理することが義務付けられました。クルマの所有者はリサイクル費用を新車は購入時、中古車は車検時に前払いします。
料金1870億円
2005年上半期に集まったリサイクル料金は、2000万台分、1870億円。施行前に懸念されたリサイクル料金支払いの拒否も「事例はない」(都内の大手ディーラー)といいます。
ASRはリサイクルが困難
これまでも廃車の8割(重量ベース)はリサイクルされてきたが、残り2割のASRはリサイクルが難しく、主に産業廃棄物の最終処分場に埋め立てられていました。自動車リサイクル法では2015年に車両の95%をリサイクルする目標を設けています。
トヨタ
樹脂類を製鋼用電気炉の燃料に
処理を義務づけられた各メーカーは、ASRを燃料などに再利用する研究を進めています。トヨタ自動車は1998年に子会社と共同で世界初の再資源化工場を建設。ASRのリサイクルを進め、2005年1月には樹脂類を製鋼用電気炉の燃料に使う技術を開発しました。
廃車の引き取り、運送、フロン回収、解体・破砕
新しい自動車リサイクルにはメーカーのほかに、廃車の引き取り、運送、フロン回収、解体・破砕などに10万を超える業者が参加し、巨大な「リサイクルの輪」を作っています。
三重オートリサイクルセンター
業者が共同でリサイクルに参入する新たな動きも始まっています。F1サーキットのおひざ元、三重県鈴鹿市で2005月から本格稼働した「三重オートリサイクルセンター」(現・株式会社マーク・コーポレーション)は、地元の鈴鹿商工会議所が主導します。
協同組合方式も
場所柄、商議所の会員の1割は自動車関連企業。当初は、メーカー、販売、運送会社など48社が、協同組合方式で効率的なリサイクルに取り組むことにしました。
部品の在庫をネット公開
クルマに残るガソリンは地下タンクにためて、工場のフォークリフトに使います。取り外した部品の在庫はインターネット上で公開し、全国から注文を受け付けます。現在の処理量は月1000台だが、3年以内に2000台に増やす計画です。リサイクルはビジネス・チャンスに変わりうるところまで来ています。
車体からバッテリーを外す
車体を処理業者に
とはいえ、リサイクルの輪が完全かどうか、なお疑問も残ります。解体業者は廃車を引き取り、タイヤ、バッテリーなどを外して車体を処理業者に渡し、利益を得ます。しかし、解体業者約5700社のうち、2005年6月までに831社で車両の引き取り実績がありません。経産・環境両省は、廃車の処理などについての実態調査を進めています。リサイクル料を負担するドライバーも省資源社会の実現に向け、「リサイクルの輪」を監視していく必要がありそうです。